vanilla郡山店のクロサワです。
皆さんこんにちは!今回はお久しぶりの「ちょっとお話長くなっても良いですか?」の第3弾!今回はオンラインショップと郡山店に数量限定でLARF(ラウンジアームシェルロッドワイヤーベース)が入荷致しましたので、久しぶりにアームシェルについてお話をしていきたいと思います。
時をさかのぼる事、1940年半ば~後半。イームズ夫妻はプライウッド(成型合板)の技術を使用し、一体成型の椅子を製作することが夢でした。しかしこの頃の成型合板技術では強度などの問題で実現までは至りませんでした。最終的に一体成型椅子ではなく、プライウッドチェアシリーズとして製品化されていきます。よく本などにプロトタイプ(試作品)が掲載されています。興味ある方は見てみてください。
その後イームズ夫妻のところに知り合いから新しい素材を教えてもらいます。それがFRP(ファイバーグラス/強化プラスチック)でした。簡単に言うと、ガラス繊維を混ぜ込んで強度を増したプラスチックの事を言います。今では車のバンパーや住宅の一部、船などの様々なものに利用されています。ある程度自由な設計が出来る最新の強化プラスチックを見たイームズ夫妻は、これなら一体成型の椅子が製作出来ると思ったのです。
それからシェルチェアは開発、製品化まで至るのですが、実は最初に販売されたのはアームシェルチェアです。結構サイドシェルチェアからアームシェルの流れで認識している方が多いですが、正しくはアームシェルからサイドシェルの順番です。
ここからは少しマニアックな話になりますが、当時アームシェルの製造と販売は別会社で行っていました。アームシェルが販売されたばかりの頃は製造が「ゼニスプラスチック社」で販売が「ハーマンミラー社」だったのです。少しややこしいですよね。写真にもありますが、当初のロゴはゼニス社とハーマンミラー社、さらにデザイナーの代表として「チャールズイームズ」という3つネームが入っていました。その数年後にゼニスプラスチック社はハーマンミラー社に買収され、シェルチェアは製造も販売もハーマンミラー社となる訳です。
ちなみにシェルチェアの歴史の中で変わっていったのはロゴだけではありません。シェル自体の改良、ゴムマウントの改良など時代や技術向上の度に変化してきたのが、シェルチェアの特徴と言っても過言ではありません。販売された当初のアームシェルはガラス繊維の含有量が多く、プラスチックは少なめでした。それは先ほども述べましたが、当時プラスチックの技術は最先端、プラスチックの含有量を増やすとコストが上がることになります。ですので最初期と呼ばれている初期のアームシェルは影が透けるほどガラス繊維の含有量が多いのです。またそのころのアームシェルは強度を上げるために、シェルの縁にガラス繊維をロープ状にしたものを入れています。いわゆるロープエッジと呼ばれているものです。このロープエッジはその後なくなっていく仕様となります。手の影が透けるほどガラス繊維が多いです。
余談ですが、アームシェルのプレス機の型を製作する過程で面白い話がありまして。実はこのアームシェルはデザインしてからプレス機の型を作成したのではなく、人の身体から設計がなされています。どういうことかと言いますと、木材とウレタンを使用した、調整できる椅子の模型のようなものを用意して、そこへ多数の人たちに座ってもらって椅子に当たる身体の曲線に合わせ模型を調整していくのです。それを元に型を仕上げていくという面白い作り方からアームシェルチェアは作られています。
また話は戻りまして、先ほどでてきたゴムマウントも改良されていきます。ゴムマウントとはアームシェルやサイドシェルの裏側についているゴムパーツの事です。このパーツを介して脚をネジで固定出来ます。最初期モデルのアームシェルには現行モデルより明らかに大きいサイズのものが使用されています。通称ラージマウントと呼ばれています。またゴムマウント中央にある金属のパーツも大きいです。こちらのゴムマウントも時代によってサイズが異なっています。現行品は厚みもあり、脚の取り付け部分に合わせ断面の角度などもついていたりしてるので進化しています。
そんなこんなで仕様変更をしながら販売されてきたシェルチェアですが、1980年終わり頃に環境問題から製造終了となってしまいます。イームズと言えばシェルチェアというイメージがありますが、実は1度生産終了しているんですね。といった感で簡単にアームシェルチェアについてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか?また機会があればイームズのアイテムのお話が出来ればと考えておりますのでお楽しみにしててくださいね!ではまたお会いしましょう!
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