深澤直人氏がハーマンミラーでサイバチェアをデザイン!
ハーマンミラーの歴史上初となる、日本在住の日本人デザイナーによるプロダクトが誕生しました!デザイナーは深澤直人氏。
デザインした商品の名は「サイバチェア」。ローンチイベントの様子を詳しくレポートします!先週、台風が最接近した9月8日。
東京の丸ノ内にてサイバチェアのローンチイベントとレセプションパーティーが開催されました。
簡単に言うと、サイバチェアのお披露目会とその記念パーティーです。
台風の中でも傘をささずに外の移動ができました(笑)昔から晴れ男なんです。
サイバとは、ポルトガル語で直感的という意味だそうです。
直感的に『エレガントだね』と言われるイスを作りたいと思っていたそうです。
当日は深澤直人さん本人によるトークショーがあり、デザインから完成までの3年間の開発秘話を聞いてきました。
ちなみにトークショーの時に座っていたこの写真のイスもセイバチェアで、ウッドレッグタイプとなります。
アーロンチェアのようなバリバリのオフィスチェアもいいけれど、現代の働き方は実に様々で、エルゴノミックチェアだけでは時代にフィットしない。
例えば、ホテルのロビーのようなくつろげる空間で働く人もいれば、オフィス空間にもデスク以外のリラックスできるエリアもある。リビングオフィスという言葉も耳にするようになり、必ずしも仕事=デスクという時代ではなくなっています。
サイバチェアはまさに、オフィスとリビングというカテゴリの境界線にあるチェアになるでしょう。
デザインをする上でまず何をしたか。
「キレイな線を引くこと」だそうです。
形を考えるのではなく、身体を与える、無いものに姿を与えるのだそうです。
これをエンボディメントと言い、深澤さんがとても好きな言葉なんだそうです。とても深い。
INFOBARも、±0の加湿器も、MARUNIのHIROSHIMAというイスも、全てキレイな線を描くことから始まったんだろうなと想像ができます。
きれいなアウトラインが決まった後はそこに身体を与えていきます。面を張るという工程で、これはCGを使って行うそうです。
ラインがしっかりしていれば、この工程でデザインが破綻することは少ないそうです。
つまり、土台や芯さえ美しければ工程が進んでも美しさを保てるということですね。
デザインが完成した後は7つのプロトタイプ(試作品)を作ったそうです。
初回のプロトタイプを写真で拝見しましたが、お世辞にもエレガントとは言えないフォルムでした。
完全に最初の線が崩れていました。
線を修正したり、ベース(脚)の光の写り込みもチェックしたり、実際に座ってクッションの硬さを変更したり、サイズを見直したり。
仕上げの生地にいたっては、テーラーメイドでスーツを作るかのような作業。
生地が浮いたりシワが出ないように生地を張り込む必要がありますが、大きな違いは、マネキンの役割を果たす芯も手作業で修正しながらの作業であること。
とにかく、エレガントとは言えない部分を徹底的に直す考え方。
最終的にジップで生地を閉じますが、そのジップをキレイにおさめるために専用のマシンを購入してもらったそうです。
また、ステッチが交わる部分は生地が重なるので盛り上がるのが普通ですが、これを無くす必要性をアメリカの職人に伝えるのはとても苦労したそうです。
3年かけてようやく思い描いた形になったそうです。
早速サイバチェアに座ってみました。
僕もインテリアの仕事に関わって10年になりますので、いろんなイスに座りましたが、このハイバックタイプはちょっと経験のない座り心地でした。
見た目のエレガントさは言うまでもありませんが、クッションの硬さと背もたれの角度が絶妙でした。
ちなみに価格帯はだいたい30万円前後。
生地やベースの種類、ハイバックかローバックかで前後します。
正直、辛口な意見も言うつもりでおりましたが。
また、ラウンジチェア&オットマンタイプもありました。
こちらは完全にリラックスチェアとなり、リビング向けになるでしょう。こちらは価格未定です。
もちろん座ってみました。
せっかくなのでオットマンに脚を置いてみたく、自分のバッグを犠牲に脚乗せ。
イームズのラウンジチェア&オットマンの包み込まれるような心地よさはとは違い、無駄なくカラダにフィットする感覚。
なにより空間に上質を感じさせるデザインと感じます。
張り地はたくさん種類がありますが、サンプルは深澤さんのお気に入りのグレーで統一。
たしかにグレーもエレガントでステキですが、他のカラーも見てみたい!
ということで合成してみました。
(実際の選択できる生地を想定していますが、合成なので雰囲気で見てください)
シブいイエローを使ったパターン。
イームズとサーリネンがデザインしたオーガニックチェア(Organic Chair)を連想するカラーリング。どことなくフォルムも近い感じがしますね。一気にミッドセンチュリー感がアップしたように思います。
セピアダーク。
エレガントという言葉だけを聞くと女性っぽい印象ですが、こんなカラーの張り地を選ぶと男性的な印象が強くなりますね!
とてもオトナっぽい!
ダンディーなのにラインはエレガント。
最後に深澤さんが質問にお答えするという時間があり、とても共感できる内容があったのでご紹介します。
Q アーロンチェアやエンボディなど、最近のハイテク系の流れとは違うサイバチェアのハーマンミラーらしさはどの変にありますか。
A 今は、「アーロンチェアのハーマンミラー」というイメージを持つ人と、「イームズやネルソンといったミッドセンチュリー系のハーマンミラー」というイメージを持つ人の2つに分かれていると思う。
そんな中、オフィス環境は変化し、今はかなりシンプルになってきた。そのため、かつてイームズ達が持っていた生活感のようなものが回帰されるのではと感じ、それを思って線を描いた。
サイバチェアはむしろ、当時のハーマンミラーらしさに戻ったと思います。
素直に、質問も回答も素晴らしい内容だと感じました!
時代は効率を求め、オフィスは進化を続けてきたと思います。
アーロンチェアなどのエルゴノミックチェアはその集大成ともいえるチェアで、求められて生まれたモノです。
技術の進化でいろんな機能が加えられ、全てカバーできたと言えるかもしれません。これは素晴らしいことだと思います。
しかし、今はそれだけじゃ補えない新しい需要が芽生えています。まだまだ少ないですが。
上のカラーを合成した写真、昔の写真ぽく色褪せた加工を施したら、サイバチェアはハーマンミラーのカタログに昔からあったように見えるかもしれません。
それが何なのか。サイバチェア自体が答えの1つかもしれません。
質問の後はレセプションパーティーに参加し、深澤さんにいろいろお話しを聞いてきました!ついでに記念写真も。
とっても話しやすく、かつ、端的に的確な回答をされる方で、ついついあんなこともこんなことも聞いてしまいました(笑)
今後もまた情報が入ればお伝えしようと思います。